南米植物文化研究ノート

南米の植物にまつわるあれこれ。個人的な研究の記録です。

【植物園紀行その1】小石川植物園(改題)

 今年になってから書き始めたこのブログですが、学期中は本業が忙しく、なかなか更新できていません。マイペースな更新になりますが、暖かい目で見守っていただけると幸いです。今回は(も)番外編で、植物園のお話です。

 

小石川植物園とは

 小石川植物園は東京の白山にあります。板橋と三田~今では横浜も結ぶ都営三田線の駅を降りて白山通りを渡り、住宅街のなかの坂道を登ってまた少しくだったところにあります。正式な名称は東京大学大学院理学研究科附属植物園。簡単にいえば東大の附属機関であり、市民向けに公開もされている植物園なのです。東大が創設された1877年(明治10年)に同大学の付属施設となりました。地理的にも、地下鉄の春日または本郷三丁目にある赤門で有名な東京大学に徒歩で移動できる距離です。

 

 正門を入って順路にそってソテツなどを眺めながら少し歩くと、まずパンパス・グラス(Cortaderia selloana)が迎えてくれます。英語で「パンパの草」。日本のススキとは明らかに姿がちがいますが、白い穂が美しい。アルゼンチンのパンパを想像させてくれる名前です。

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 左手に本館(非公開)があります。受付でもらう案内図によれば、研究室、事務室のほか、「月昔」葉標本(さくようひょうほんー字が出ませんでした。簡単に言うと押し花と同じ方法で作った標本)約70万点、植物学図書約2万冊があり、研究に活用されているとか。本館向かいにシダ園、その奥に柴田記念館があります。こちらではつい最近まで、2011ねんの震災の津波後に現れた植物を描いた植物画の展示が行われていました。植物園発行の植物画カードや絵葉書、冊子などはこちらで購入できます。つづきにあるのは温室。かなり長いこと整備されていた記憶がありますが、2019年竣工で、現在は10:00-15:00のあいだ一般公開されています。

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 熱帯・亜熱帯地域の1400種が栽培されており、小笠原諸島の絶滅危惧植物の保護増殖事業もこのなかでおこなわれています。写真右は、夏の暑さに耐えられない植物のための冷温室です。

 

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 温室内のアメリカ大陸出身の植物ということでは、写真の(ボケてしまっていますが)キンゴウカン(Acacia farnesiana)、スペイン語で"Clavel del aire"ー風のカーネーションーと呼ばれるチランジア(Tillandsia)などが花を咲かせていました。東南アジア原産の小さな花をつける蘭などもいたるところに… 観光目的の植物園とはちがった、じっくりと植物を観察したい人向けの場所です。

 

 温室を出ると春は桜がきれいな芝生広場がひろがり、その向こうに薬園保存園(元徳川幕府の薬園)ー時代劇に出てくる小石川養生所はここに1722年(享保7年)創設されたとかーがあります。江戸幕府の名を受けた青木昆陽(1698-1769)がサツマイモの試作を行ったことを示す碑もあります。

 薬草園のとなりは生きた植物によって植物の分類体系を理解できるように「主要な科を代表する約500種の維管束植物をほぼエングラーの分類体系に従って配列した」分類標本園などがあります。こういうところが研究・教育施設としての面目躍如たるところ。そのほか温室前あたりには、メンデルのブドウ、ニュートンのリンゴ、園内各所に精子が発見されたソテツや銀杏の木もあるので、お子さんへの科学および性教育にも役立つかもしれませぬ。

 その先は巨大なスズカケノキなどが印象的なうっそうとした森になり、森を抜けると日本庭園が姿を現し、梅園や池、野鳥の遊ぶ湿地などがあります。

 

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旧東京医学校本館

 下の写真の赤い建物は、現在、総合研究博物館小石川分館として利用されている「旧東京医学校本館」(重要文化財)。明治期に建てられたもので、本郷からここに移設されたそうですが、ベルリンなどで学んだかつての東京帝国大学の医学部教授たちが、この建物のなかで教鞭をとったのでしょうか。東京大学医学部の歴史や収集品については、東京駅前の KITTEビル内INTERMEDIATHEQUE

でも知ることができます。一度訪れてみられるといいかもしれません。

 

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 ここが植物園の西の端になるので、あとは踵を返して庭園の中を通り、メタセコイアの林を抜けて正門へ戻ります。東西約750メートル、南北約300メートル、面積約16ヘクタール。起伏にとんだ地形ですので、それなりに散歩のしがいのあるコースかと思います。歩きやすい靴でお出かけください。

 

利用の仕方、開園日などは下記でご確認のほどを。

小石川植物園 (u-tokyo.ac.jp)

入園料500円

 

おまけとごあいさつ

園内は、一切の採取禁止。決まりを守って楽しみましょう~

そして、いつも読んでくださっている皆様、どうぞよいお年をお迎えください。

2022年もマイペースで更新していきたいと思いますので、よろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。

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