南米植物文化研究ノート

南米の植物にまつわるあれこれ。個人的な研究の記録です。

チリ南部から(1) マキ

 長らくお休みしていたブログですが、また少しずつつづっていきたいと思います。まずは2月に旅したチリ南部エリクラ谷からの報告です。

 基本このブログではあまりにも知名度の高い植物はあつかわないのですが、マキ(maqui, 学名Aristotelia chilensis )については、いまのところまだ日本での知名度がそこまで高くないことから書いていこうと思います。

  マキはチリ南部に自生するホルトノキ科の樹木です。

道端のマキを摘む。

 今回泊めていただいた民宿の知り合いのお嬢さん(身長165センチぐらい?)の背丈より上に生っています。5メートルほどの高さまで成長することもあり、実はブルーベリーより小さくて汁気も少ないですが、抵抗なく口のなかでほぐれてそのまま食べることができます。食べたあとは舌が青く染まるところは、日本の桑の実のようです。

 この実を干したものを、少し炒ってから煮だした飲み物が下の写真、右のカップ。それほど酸っぱくはないですが、このあたりでとれるハチミツを入れるとさらに美味しくなります。

 

ある日の朝食。庭を走り回るニワトリの卵とパン、マキのコーヒー(という呼び方もする)。

 

 この谷の人たちによって編集された小冊子*1によれば、マキの葉と樹皮はやけどや炎症に効果があり、果実からは古くは果汁を発酵させた飲み物が作られていたそうです。今日では焼酎を使って果実酒を作ったり、ジュースやジャム、デザートなどに使われるとのこと。また、抗酸化作用の強い成分*2が豊富なことから、世界的に需要が高まっているのだそうです。日本でもマキを使用した健康食品があるようです。参考までに一種類だけリンクをはっておきます。

 

 エリクラ谷は、日本の山間の温泉地を思わせるような山に囲まれた緑深いところで、首都サンティアゴからは直線距離で600キロメートルほど。今回お世話になった宿は、マプチェ人のご主人が営んでいて、地域の人たちや自然と調和したツーリズムを目指している場です。数回にわたってこの谷の植物やお宿での経験をお伝えできればと思います。

 



 

*1:Centro Cultural Rayen Wekeche Valle de Elikura "Elikurache Kimün Mongen Kimün  Guia introductoria" 2019

*2:ポリフェノールの一種アントシアニン

沖縄の植物たち(3) これでおしまい。

 すっかり間が空いてしまいました。ほぼ二か月たちましたが、11月初旬の沖縄で見た植物たちの報告をつづけます。

 

 道端で最初に目に入ったのは右の実。何かな?と思って目をこらすと、優雅なサガリバナでした。(バスターミナル前) 沖縄県営鉄道大正3年開業)の転車台の遺構*1そばでした。戦前の沖縄には鉄道が存在したのですが、その後モノレールができるまで鉄道は敷設されませんでした。

 

 同じく街角の植え込みで見た月桃ゲットウ。沖縄のことばではサンニン、ムーチーガサなど)。衣類の虫よけやアロマオイルにも使われる有用植物で、旧歴の12月8日に健康・長寿を願ってこの葉で包んで蒸した餅(ムーチー)を食べるそうです。そういえばアルゼンチンでお邪魔した友人宅の庭にもこの植物がありましたが、偶然だったのでしょうか。友人の母方のご先祖は沖縄から移住してこられた方でした。

 

 青空に映えるポンポン状の花が可愛いけど繁殖力のつよい銀合歓。中米~メキシコ原産。小笠原諸島八重山諸島には人為的に持ち込まれ野生化したそう。*2 夜は眠るように葉を閉じることから沖縄ではニブイギ(眠る木)と呼ばれるそうです。オジギソウにも通じるネーミングですが、「眠る木」のほうに私は詩情を感じます。この植物、ギンネムのほかにギンゴウカンという呼び名がありますが、そういえば一昨年の年末に訪れた小石川植物園の温室にはキンゴウカン*3がありました。黄色と白の花を金銀に見たてるのはよくありますね。なお、沖縄にはボリビア原産のオオベニゴウカン(花は赤または白)、ピンクの花をつけるスリナムゴウカンがあるけれど、ネムノキは分布していないそうです。*4

 

いたるところで見かけたサンダンカ類のベニデマリ。鮮やかな朱色が印象的です。

 

四階建て?の建物の壁面を覆いつくすベンガルヤハズカズラ

近くで見たらこんなに可憐な花だけど、たくましい!

 

 ほかにもたくさんはじめましての花を見かけましたが、すべてを紹介するのは無理なのでこのあたりで… 今回偶然見つけた図鑑がなかったら、名前もわからなかったものも多かったと思います。またいつか図鑑を手に旅してみたいものです。

 

▼図鑑については、こちらの記事を。

plantasderosita.hatenadiary.jp

 

小石川植物園のキンゴウカンについてはこちらを。

plantasderosita.hatenadiary.jp

 



 

沖縄の植物たち(2) 道端の花

(1)につづき、ひきつづき『沖縄の身近な植物図鑑』を参考に、今年の11月初めに私がであった植物たちを紹介していきます。

 

タイワンモクゲンジ 

ムクロジ科モクゲンジ属 Koelreuteia elegans subsp. formosana(台湾原産)

 

 たぶん自分は車の運転には向いていないと思う理由として、気になるものがあるとそれ以外のものに注意が向かないという特性があります。とくに植物に目がありません。電車やバスに乗ると窓から植物を見て楽しんでいます。

 

 この木は街路樹につかわれているのですが、樹冠に色の違う部分があるので、不思議な色の花をつけているようにみえ、ずっと見入ってしまいました。でも花にはしてはどうもおかしい。もやもやしていたのですが、図鑑によればそれは実だったのですね。そして木の下に落ちていたのがこちらの実でした。折り紙の風船をしぼませて桃色に色付けしたような。これに種が入っています。

 

 

 次は、モノレールの下を流れる川のへりの細い道のわきに咲いていた花。センダングサの仲間サシグサ(タチアワユキセンダングサ、オオバナノセンダングサ。キク科センダングサ属 Bidens alba)です。白い花びらが印象的です。タネは細長く放射状につき、とげとげがあるので洋服などによくひっかかかります。熱帯アメリカ原産で、お茶や山菜、ヤギの餌*1としてつかわれるとか。

 

 

 

▲同じセンダングサ属の北関東のコセンダングサ Bidens pilosa L. 北アメリカ原産

花びらがありません。

 

 こちらはクリーム色のコトブキギク。 キク科コトブキギク属 Tridax procumbens。これも熱帯アメリカ原産だそうですが、道路わきでがんばっていました。

 沖縄にはハイビスカスを始めとして、色鮮やかで華やかな花も多いけど、こんな地味な植物もよく見るとかわいかったです。

 

 最後にお約束のハイビスカス(アオイ科フヨウ属 Hibiscus hybridus)を。


 写真の物とはちがいますが、花弁が波状の赤いハイビスカスはブッソウゲと呼ばれる古くから沖縄にあるもので(中国から伝わったと考えられる)墓前、仏前に供えられる花*2だそうです。

 ハイビスカスというとハワイを想う方も多いと思いますが、私には沖縄のイメージが強いです。1980年の『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』は、主人公の寅次郎と因縁のある歌手リリーが沖縄で病に倒れ、寅さんが見舞いに行くというお話です。寅さんのダメ男ぶりにいらっとさせられもしますが、”本土復帰”からまだ間もない沖縄の街の様子が見られる作品です。(1980年、山田洋次監督)  

 そういえば、今年は復帰から50年の節目の年です。私が初めて沖縄に行ったのは1990年代半ばで、まだモノレールができる前でした。今回行ってみて、モノレールが大きく街を変えたような印象を持ちました。東京や北関東のこの街だって、開発に次ぐ開発でずいぶん変わりましたけれども、ね。

 

 

空港で、沖縄の海のサンゴを使って焙煎しているハイビスカスティーを発見

35COFFEEオフィシャルサイト | 35ハイビスカスティ | 沖縄県

 

(つづく)

 

 

*1:林将之、名嘉初美編『沖縄の身近な植物図鑑』2022年

*2:林将之、名嘉初美編『沖縄の身近な植物図鑑』2022年による

沖縄の植物たち(1) 図鑑との出会い

 沖縄に行ったのは比較的遅くて20代も半ばでしたが、それから何度か行く機会がありました。今月初め、知り合いが関わるお芝居の上演があり、たまたま資金があったこともあり(以前入っていた生協の積立金がまとまった金額になっていた)行ってきました。あまり時間もなかったし、長距離の移動もしたくなかったので、モノレールとバスをほん少し使う程度の範囲で動き回りました。モノレールの赤嶺駅前で見たモモイロノウゼン ノウゼンカズラ科タベブイア属 Tabebuia pallida。

 

花がもっとたくさんついていたら壮観だったでしょう。そこそこ大きな木です。3~4メートルの高さでした。カリブ海地方原産とのこと。

 

 

 何度目かの沖縄で気づいたのが、中南米と同じ木が存在しているということでした。初めてそれに気づいたのはイペーの花を見たときです。こちらは2018年にアルゼンチン北部のトゥクマン市で撮った写真ですが、アルゼンチンではラパチョ、ブラジルではイペー(国花なのだそう)と呼ばれています。この花がキバナイペー(ノウゼンカズラ科ハンドロアンサス属 Handroanthus chrysotrichus)として沖縄でも愛されていて、沖縄から南米に移住した人たちの子孫が来日し、沖縄を訪れた際、懐かしくご覧になることもあるようです。

 

 

 その後、幹がとっくりのような形をしているトックリキワタ(現地名 パロ・ボラッチョースペイン語で「酔っ払いの木」)やハカランダ*1を持ち込んだ沖縄出身の農業技術者*2の方がいたという話をwikipediaでみて、今回も街中で何か発見できたらいいなと思って那覇市内を歩いていたら、街路樹としてこんな木がありました。(旭橋のバスターミナル付近)ある程度古そうな通りには大きな木が、新しい通りには細い若そうな木がありました。

 

 

 花はもう終わってしまっていたようで、羽根のような葉がもしかしてハカランダ?と思ったのですが、実の形がちがっていました。いったいなんの木だろうと気になっていたところ、ふと立ち寄った書店で見つけた植物図鑑が名前を教えてくれたのです。

 

 

 

 

 この木は真っ赤な華やかな花をつけるホウオウボクマメ科ホウオウボク属 Deloniz regia)でした。マダガスカル原産で「世界中の熱帯に植栽され」「同じく赤い花が目立つカエンボク」「紫の花のジャカランダ(沖縄ではまれ)とともに、熱帯の世界三大花木に数えられる」(同書295頁)そうです。

 偶然出会ってしまったこの図鑑、お財布にはかなりの打撃でしたが、今年の9月に発行されたばかり。豊富な写真によって、花や実、葉の形から植物名を調べられる引きやすさ、そして地元(主に沖縄本島伊江島)出身の方の植物にまつわる思い出や経験などのコラムが収録されています。日系ブラジル人の方によるキバナイペーの思い出もありました。読みながら、まるで現地の方たちといっしょの観察会に参加しているような楽しさを感じました。というわけでこの図鑑を頼りながら、今回の旅で見た沖縄の植物を紹介したいと思います。(つづく)

 

 

 

plantasderosita.hatenadiary.jp

 

 



 

*1:記事下部のリンクからどうぞ

*2:天野鉄夫 1912-1985

キャッサバ祭(転載情報)

 知り合いの方の企画をご紹介します。南米原産でアフリカやアジアにひろがり重要な食料となっているのに、まだ日本では知名度の低い植物「キャッサバ」(ほかにマニオク、マンジョーカ、ユカなどとも)を紹介するイベントです。タピオカやポンデケージョなどの原材料として名前をお聞きになった方もあるかもしれません。オンラインだから実際に味わうことはできませんが、さまざまな料理法も紹介してもらえるようです。

 

(以下転載)

井戸端人類学 F2キッチン イベント#3
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秋のとことん キャッサバ祭!
—秋の実りと食、キャッサバ芋をオンラインで味わう
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日時:2022年 11月12日(土)19:00~21:00
参加費無料
申し込みURL
https://idobata4evento.peatix.com/


● キャッサバって何?&もっと楽しむための収穫鑑賞
 解説:荒木 直人(キャッサバ農家/ライオン・ポテト 代表)
  ※希望の方はキャッサバ芋を購入できます。(詳細は下記にてご案内)
● キャッサバを味わうための料理教室
 調理解説:加藤 里織(奄美移民研究家)   
● パネルトーク
 「キャッサバ食事情 in 奄美、ブラジル、東アフリカ地域」
  原産地ブラジルと最大の生産地アフリカに関わる3人によるパネルトーク
 パネラー:荒木直人& 加藤里織& 溝内 克之(在タンザニアのフィールドワーカー)
 (進行:井上真悠子)

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タピオカだけじゃない、キャッサバ芋は今が旬!
日本でも近年キャッサバは栽培され、各地で食べられています。
今回は今が旬のキャッサバを収穫する様子もご紹介!
日常食として食べている各地のキャッサバにまつわる食事情を知るだけではなく、調理法もご紹介します。


■登壇者■
荒木 直人(キャッサバ農家/ライオン・ポテト 代表)
 82年兵庫県生まれ。00年京都文教大学文化人類学科入学。04年、同学部卒業。1年間の遊学の後、06年、アフリカ専門の旅行会社、道祖神に入社。22年3月同社退職。同年4月よりライオンポテトという屋号でキャッサバ専門農家を目指して研修中。
 
加藤 里織(奄美移民研究家)
 横浜生まれ。奄美・加計呂麻2世。日本料理調理師を経て、2012年神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科入学。’21年、同研究科修了。’15年サンパウロ大学大学院留学。以後、’20年まで毎年2〜3ヶ月ブラジルでフィールドワーク。専門は奄美ブラジル移民史。


溝内 克之(在タンザニアのフィールドワーカー)
 1996年、京都文教大学文化人類学科入学。1999年に大学を休学して青年開学協力隊員としてタンザニア渡航して以来、キャッサバの主要産地であるアフリカ(特に東アフリカ)で調査研究や国際協力の仕事をしている。現在もタンザニア在住。日本での一時帰国の際には毎回キャッサバ・チップスを持ち帰る。


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キャッサバは解説&収穫でも登場する

”ライオン・ポテト” のクラウドファンディングで購入可能。
生芋・1年保存可能な冷凍芋が購入できます。
※ 天候等によって収穫量は変動するため、イベントまでに商品が到着しない場合もありますので、ご了承ください。
https://camp-fire.jp/projects/view/622885

主催: 井戸端人類学 F2キッチン
e-mail: idobata-a-f2(a)googlegroups.com

連絡するときは(a)をアットマークに変えてどうぞ。申し込み先リンクは上のほうに。

◆ 井戸端人類学 F2キッチン ◆
文化人類学や周辺の知見や身の回りのテーマで面白いことを企てる実験の場。
由来はかつて学生や教員が集った京都文教大学人間学部文化人類学科の研究室フロア、普照館 2階のキッチンラウンジ。


以上転載

 

キャッサバと言えばこんな民話の絵本も… ふしぎなお話です。

clilaj.blogspot.com

 

ショウジョウソウまたは夏のポインセチア

 

はじめましてのショウジョウソウ

Euphorbia cyathophora トウダイグサ科トウダイグサ属 1年草

  先月引っ越しをして、以前と比べると人口が20分の1の北関東某市に住むことになりました。といっても以前数年間住んでいたことのある場所。ここでは、自然の気配がより濃く感じられる気がします。夏の日差しが照り付けるこの街で、最初に見つけた新しい植物はショウジョウソウと呼ばれる帰化植物。一度ならだれかが植えたのかと思うけど、今月はもう三か所で見かけたので。

 

道路わきで。

 

 何かに似ていると思ったら、「サマーポインセチア」(夏のポインセチア)とも呼ばれるそうです。クリスマスが近づくと良くみかける赤い葉が印象的な植物ポインセチアになぞらえています。ポインセチアEuphorbia pulcherrima)はメキシコ原産。現地では3メートルほどの大きな木になるそうで、和名はショウジョウボク。ショウジョウソウの方は高さ60センチほどにしかなりませんが、小さな黄色い目立たない花が咲くところもそっくりで、花が咲く季節になると苞葉(花や花序の基部につく葉)が赤く色づきます。「バイオリン型」と図鑑などに書かれている葉の形も個性的。

 

この可愛さでは除去できませんね…

駐車場の脇で元気に咲いております。

 

↑こちらは6月に同じく市内の湿地で見たハンゲショウドクダミ科)。花期に苞葉が白くなる。多年草。葉の色が変化する植物の仲間。

猩々とは?

 ちなみに「ショウジョウ」という単語はいろんな生き物の名前につけられています。動物だとショウジョウガイ、ショウジョウエビ、ショウジョウインコ、植物だとショウジョウバカマ、ショウジョウスゲーざっと百科事典で引いてみただけでもこれだけ出てきます。

 この「ショウジョウ」は漢字で書くと「猩々」、現代の中国語ではオランウータンを指すそうです。古くは中国の伝説に出てくる想像上の生き物で、日本の能楽にもしばしば登場します。水の中に住み、お酒や踊りが好きなのだとか。そのものずばりのタイトルがついた演目がこちら。

 


www.youtube.com

 

  どうやら、上の動画のような「猩々」の髪の色の連想からか、赤い部分をもつ生き物を「ショウジョウ~」と名付けることになった模様。というのも、じつは中国では猩々の毛の色は赤と決まっていないらしいから… 「猩々イメージの変遷」という論文の中で中国出身の能楽研究者の王冬蘭さんは、中国語の文献では猩々の毛は黄色とも青とも書かれていること、棲んでいる場所も水中とは限らない、また「霊獣」というよりも「怪獣」として扱われているなどの点をあげ、”「猩々」の作者は中国の文献あるいはその翻案作に基づく猩々の怪獣のイメージの上に、作者の想像力を発揮して、めでたい霊獣のイメージを加えて「猩々」を創作したのだろうと推測される”と書かれています。*1

   

 

まだまだ新顔

 図鑑によって少しずつ違いますが、原産地は北アメリカ南部(メキシコも地理上の区分は北アメリカ。しつこいようですが…)からアルゼンチンの北部という点はだいたい一致していて、「世界の熱帯から亜熱帯に広く帰化している」*2そうです。「明治時代に渡来し観賞用に栽培され」*3「沖縄や小笠原では日本に返還になるずっと以前から野生化していて、かなり古い時代に帰化したものだと考えられている。最近では本州でも栽培品が逃げだしたと考えられるものが道端などで見られる。」*4 と2006年の図鑑に書かれていました。

 「最近では」とあるので気になったのですが、この植物を以前ここに住んでいたときに見た記憶がないので、ひょっとするとその後出現したメンバーなのかも。近所の図書館にあった図鑑などで調べてみたところ、『帰化&外来植物見分け方マニュアル950種』*5秀和システム、2020年)、日本帰化植物写真図鑑(全国農村教育協会、2001年初版発行、11年版を参照)、『日本の帰化植物図譜』(アボック社、2009年)には載っていましたが、『原色日本帰化植物図鑑』(保育社、昭和51年=1976年)にはありませんでした。まだまだ当市では(も)新しいメンバーのようです。今後の推移を見守っていきたいと思います。

 

日本の帰化植物図譜

 

 

 

帰化&外来植物 見分け方マニュアル950種

 

秋の野草 (山溪フィールドブックス)

 

この花なに?がひと目でわかる! 散歩の花図鑑

以上はショウジョウソウの載っていた図鑑類。

 

*1:王冬蘭『能における「中国」』東方書店、2005年

*2:永田芳男著『秋の野草』山と渓谷社、2006年

*3:日本国語大辞典、1974年

*4:永田、2006年

*5:じつはよく似たショウジョウソウモドキという植物があるのです。ちなみに「…モドキ」とは葉の形や色づきかたが異なる。

【植物園紀行その2】みずの森

 今月初め、仕事で京都へ行く予定があり、帰りに「みずの森」という名前の植物園に行ってきました。正式な名称は「草津市立水生植物公園みずの森」といいます。草津と言っても温泉で有名なところではなくて、滋賀県草津市。琵琶湖につきだした烏丸半島にあります。「植物と人、水と人とのふれあい」をテーマにした3.7haの公園で、ロータス館という温室&展示・教育施設も園内にあります。この館に興味をもったのは、南米に見られるオオオニバスなどの珍しい熱帯植物がみられるときいたからです。

 草津駅から琵琶湖博物館行の路線バスにゆられること30分。バスは街を抜けると水田や麦畑に囲まれた細い道を走り、やがて蓮の田が見えてきます。

 

      (バスの窓から見えた風景)

 

 琵琶湖博物館の次が水生植物園なのですが、ここからバスが折り返すらしく、終点と思って安心していたら駅に連れ戻されそうになりました(笑)。おかげでちょっと面白い建物も見ることができましたし、琵琶湖の一端も拝むことができました。琵琶湖は日本一大きな湖で面積およそ669平方キロメートル、広し。

 

偶然見つけた琵琶湖開発総合管理所湖南管理所

奥の方に堆肥配布終了との文字が見えますが、湖の刈草を利用して堆肥を作り配布しているそうです。

 

なんの網だろう? 葦(ヨシ)がたくさん生えているのがわかります。

 

この時期、公園(有料)の入り口で出迎えてくれるデビルズハンドトゥリー(英語 悪魔の手の木)学名 Chiranthodendron pentadactylon

 メキシコ南部、グアテマラ原産だそうです。ナワトル語ではmacpalxochitl 。"xochitl"は「花」という意味だと聞いたことがあるのですが、"macpal"は調べてもわかりませんでした。単語の意味としては、「手のひらの花」という意味だそうです。スペイン語ではFlor de manitas(小さな手の花)。たしかに細長く伸びたおしべは爪っぽい。英語圏の人たちには悪魔の手に見えるようですね。

 

 水生植物公園というだけあって、園内には三つの池があり、さまざまな水生植物が植えられていました。6月の初旬ということもあってスイレンやアヤメがきれいでした。いまごろは蓮の花も開き始めていることでしょう。

 

 

 真珠の養殖場を再現した(?)風景。万葉の小道、山の小道など名前の付いた風情ある散歩コースも。

 

 子連れに喜ばれそうな遊具広場や、妖精の森などもあります。

シダレエンジュのドーム。

 

中に入ると…


温室も小さいけれど見やすい工夫がいろいろされていました。

 

 奥に見えるのはパラグアイオニバス(Victoria cruziana) アルゼンチン、パラグアイ原産で、葉のふちが立ち上がっているのが特徴。

 

 

 スイレンよりだいぶ小さいけど、よく見ると可愛い花が咲いていました。ガガブタ Nymphoides indica *1という水草。在来種ですが、水質の悪化により、いまでは準絶滅危惧種だそうです。

 

 草津は遠く南米から来た方も多く暮らすと聞くところ。琵琶湖線のなかや、公園でも数人、どことなく南米の風を感じる人たちとすれちがいました。植物たちが遠い国から来て日本で暮らす方たちの心のいやしになっていることを祈ります。

 

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